Research Interest
発声にかかわるあらゆる情報処理に興味を持っています。主な研究テーマは以下の通りです。
単純な感覚刺激入力による発声促進・変調
人は外界から多様な感覚情報を取り込み,それに基づいて運動することで外界との相互作用を行っている。 日常的な運動の中でも発声は,他者とのコミュニケーションや意図伝達のための重要な機能であり,音声学・音響工学分野を中心に発声研究が行われてきた。 一方,実験心理学では,多感覚間相互作用や,知覚と手指運動との相互作用について多くの検討がなされてきた。ただし発声運動を扱った研究は少なく, どのような感覚入力が発声変調を生じさせるかは未だ不明な点が多い。特に,顔運動(Visual Speech)など高次な入力でなく, 単純で低次な感覚入力が発声に影響するかはその大部分が明らかにされていない。
鈴木・永井 (2020, 認知科学), Suzuki & Nagai (2024, MSR)
発声フィードバックによる自己関連処理の変調
声は”聴覚的な顔”とも呼ばれるほど,個人特有の解剖学的・心理学的特徴を有しており,発声者の感情・身体状態・性格など様々な自己特性を表す。 実際,音声聴取者はこれら特性を読み取ることができる。では,発声者自身は自己発声から自己の状態を把握しているのだろうか。 人は話すと同時に自らの音声を聴き,事前の発声結果予測と発声フィードバックから得られた実際の結果とを比較することで発声をモニタリングし,調整している。 いくつかの発声研究は,自己発声音声が自己イメージのモニタリングに利用されると仮説立てている。しかし,それを示す実験的証拠は,感情処理に限られており, 発声モニタリングが自己関連処理全般で同様かは不明である。また,その基盤となる音声-身体処理との情報共有についても同時に検討を進めている。